GMPとは、製品の製造および品質管理に関する考え方や基準の総称です。医薬品や健康食品、化粧品の製造現場でよく使われ、品質管理の基準として広く普及していますが、どのような目的でどんなことが行われるのでしょうか。本記事では、GMPの定義から3原則、種類、よくある疑問まで基礎知識を解説します。

 


GMPとは


GMP(Good Manufacturing Practice)とは、医薬品・健康食品・化粧品などの製造管理および品質管理について製造所が守るべき基準のことを指します。日本語では「適正製造規範」と訳され、原材料の受け入れから製品の出荷まで、すべての工程で一定の品質・安全性を求めます。

GMPが目指すものを一言でいえば、「誰が、いつ、どこで製造しても、同じ品質の製品を安定して作れる体制を整えること」。製造担当者の経験や熟練度に左右されない、再現性のある製造工程の構築がその本質といえます。

 

・GMP省令とは

GMP省令とは、医薬品・医薬部外品の製造管理および品質管理に関する基準(GMP)を定めた厚生労働省令のことです。正式名称は「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(平成16年厚生労働省令第179号)といい、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に基づいて制定されています。

日本では1980年に医薬品のGMPが省令化され(当時の名称は「医薬品の製造管理及び品質管理規則」)、その後、時代の変化に応じた改正が重ねられてきました。2005年からは製造販売承認の要件としても適用されています。

GMP省令は、医薬品および一部の指定された医薬部外品を対象としており、対象の製造業者には遵守が義務付けられています。健康食品や化粧品については別途ガイドラインが存在しますが、その遵守(または民間認証の取得)は任意です。

 

・GMP認証とは

GMP認証とは、一般的に健康食品や化粧品などの分野における民間の適合認定制度を指すことが多くあります。

GMPは、もともと医薬品等の安全性と品質を確保するために国が定めた規制ですが、健康食品の分野におけるGMP認証は、製造施設や製造工程が基準を満たしているかどうかを、消費者庁の「健康食品GMPガイドライン」に基づいて第三者機関が審査・確認し、適合を認定する制度です。2026年現在は、公益財団法人 日本健康・栄養食品協会(日健栄協/JHNFA)と、一般社団法人 日本健康食品規格協会(JIHFS)の2つの機関が認証を行っています。この認定を維持するには、毎年1回の定期調査と、3年ごとの更新審査が必要です。

なお、化粧品分野においては、国際規格であるISO 22716(化粧品GMP)がガイドラインとして用いられており、民間の審査登録機関がその審査と認証を担っています。

 


GMPとISOはどう違う?製品分野ごとの基準と位置づけ


GMPとISOは、どちらも品質管理に関わる規格・基準ですが、両者の関係は対象とする製品分野によって異なります。一律に「GMP対ISO」と比較できるものではないため、分野ごとに整理すると分かりやすくなります。

 

製品分野 基準と位置づけ
医薬品 ・法律(GMP省令)に基づく強制基準としてGMPを遵守
・医薬品専用のISO規格はない
・品質マネジメントシステム(ISO 9001の考え方)とGMPを統合した「ICH Q10」という国際的なガイドラインが存在する
健康食品 ・消費者庁が定めた「健康食品GMPガイドライン」に基づいて運用(一部を除いて任意)
・食品安全マネジメントの国際規格であるISO 22000やFSSC 22000とも関連性がある
化粧品 ・業界団体が国際規格ISO 22716を化粧品GMPガイドラインとして採用しており、行政もこれを後押ししている
・取得は任意

 

このように、ISOにもGMPにも複数の規格・基準が存在するため、両者をひとまとめにして比較するのではなく、「どの製品分野で、どの基準が、どのような位置づけ(法的義務か任意か)で用いられているか」を押さえることが重要です。

 


GMPの3原則とは


GMPは「人為的な誤りを最小限にする」「製品の汚染および品質低下を防止する」「高い品質を保証するシステムを設計する」の3つの基本原則に基づいて設計されています。これは医薬品・健康食品・化粧品を問わず、GMP全体の考え方の根幹をなすものです。

 

【1】人為的な誤りを最小限にする

製造現場でのヒューマンエラーは、品質低下や異物混入の原因になります。思い込み、手順の曖昧さ、見落としなどの人為的なミスをゼロにすることは現実的ではありませんが、「仕組みで防ぐ」ことはできます。

GMPでは、作業手順を標準作業手順書(SOP)などの形で文書化し、誰でも同じ手順で作業できる環境を整えることを求めています。また、作業のたびに記録を残すことで、問題が起きたときに「いつ・誰が・何をしたか」をさかのぼって確認できるトレーサビリティ(追跡可能性)も確保されます。

さらに、作業員に対する定期的な教育訓練の実施と、その記録の保存もGMPの要件として定められており、知識・技能の水準を継続的に維持することが求められます。

 

【2】製品の汚染および品質低下を防止する

製造工程における異物混入・微生物汚染・交差汚染(異なる製品や原材料が混入すること)・品質劣化を防ぐことも、GMPの重要な柱のひとつです。

具体的には、空調管理・陽圧管理・清潔区域の区分けなど製造環境の整備、設備・器具の定期洗浄・点検、原材料の適正保管と取り扱い管理などが求められます。製造エリアへの入室管理や作業着の着用ルールも、外部からの汚染リスクを遮断するための重要な管理項目です。

なお「医薬品の汚染」という表現が使われることがありますが、この考え方は健康食品や化粧品の製造にも同様に適用されます。

 

【3】高い品質を保証するシステムを設計する

個々の作業員の技量に頼るのではなく、製造プロセス全体を「システム」として設計し、誰が担当しても同じ品質の製品が生産できる体制を構築することがこの原則の核心です。

製造設備の定期的なバリデーション(設備が仕様通りに動くかを確認・記録する作業)、原材料から最終製品までの試験・検査体制などの手順を、あらかじめ設計・整備することで、作業員が変わっても品質が安定します。

また、基準からの逸脱が発生した際は、原因を究明して再発防止策を講じる「CAPA(是正処置・予防処置)」の手順も整備しておく必要があります。

「人が頑張る」のではなく、「優れた仕組みが現場を支える」製造体制の構築が重要です。

 


GMPを導入するメリット


GMPを導入することには、品質管理の底上げにとどまらない多面的なメリットがあります。主なものとして、次の4点が挙げられます。

 

1.取引先や消費者からの信頼性の向上(ビジネス上の差別化)

製造工程全体の安全性が第三者機関によって客観的に証明されるため、会社の信頼性が飛躍的に高まります。特に受託製造(OEM)ビジネスにおいては、委託元が製造先を選定する際の「必須条件」となっているケースが多く、競合他社との強力な差別化要素になります。

 

2.最新の法規制(コンプライアンス)への確実な対応

近年、機能性表示食品(サプリメント形状)においてGMPの遵守が義務化されるなど、健康食品や化粧品を取り巻く国の規制は厳格化の傾向にあります。あらかじめGMP体制を確立しておくことで、今後の法改正や行政の監査にも慌てることなく、事業の継続性を確保できます。

 

3.製造トラブルの未然防止とコスト削減(現場の最適化)

原材料の受け入れから出荷に至る全工程で「人為的ミスの防止」や「汚染・品質低下の防止」を仕組み化するため、製品のばらつきがなくなります。結果として、異物混入や成分エラーといった致命的な品質トラブル(回収リスク)を未然に防ぎ、廃棄コストの削減や現場の業務効率化につながります。

 

4.海外市場(グローバル展開)への足がかり

特に化粧品分野におけるISO 22716(化粧品GMP)への準拠は、欧州(EU)やASEAN諸国など、海外へ製品を輸出する際の必須要件となっているケースが多々あります。グローバルなGMP基準をクリアしておくことは、海外の企業との取引や海外での販売時のスムーズなパスポートとなります。

 


GMPの種類


GMPは対象となる製品カテゴリーによって、根拠となる法令やガイドラインが異なります。医薬品・健康食品・化粧品それぞれの基準を理解しておくことが、適切な委託先の選定にもつながります。

 

・医薬品GMP

医薬品(および一部の指定された医薬部外品)は、薬機法に基づくGMP省令への適合が法律で義務付けられています。行政による適合性調査を受けることが必要で、3つのGMPの中でもっとも厳格な基準が設けられています。

製造施設・設備・人員・記録管理のすべてにわたって詳細な要件が定められており、原薬GMPにおいては国際的なICH Q7規格などとも整合が図られています。

 

・健康食品GMP

健康食品を対象とするGMPは、厚生労働省が2005年2月に通知した「健康食品GMPガイドライン」を出発点としています(現在、健康食品の表示・制度は消費者庁の所管に移管されています)。ガイドラインは制度の見直しに応じて改訂が重ねられており、現在は日健栄協とJIHFSの2機関が、これに基づいて審査・認証を行っています。取得は任意ですが、機能性表示食品や特定保健用食品(トクホ)の製造においても広く活用されています。

なお2024年に発生したサプリメントによる健康被害事案を契機とした制度の見直しにより、天然抽出物等を原材料とする錠剤・カプセル剤などのサプリメント形状の機能性表示食品については、GMPに基づく製造管理が届出者の遵守事項として要件化されました(GMP告示:令和6年8月30日公布・同年9月1日施行、経過措置期間は2026年8月末まで)。健康食品の一部については、もはや「任意」ではなく義務へと位置づけが変わりつつある点に注意が必要です。

 

・化粧品GMP

化粧品分野では、ISO(国際標準化機構)が定めるISO 22716(化粧品GMPガイドライン)が国際的な基準として採用されています。

取得は任意ですが、製造・管理・保管・出荷のプロセスを包括しており、海外展開を含む化粧品取引では取得を条件とするケースが増えています。

 


GMPはなぜできたのか


・GMPが作られたきっかけ

GMPの原点は、1960年代に大きな問題となったサリドマイド事件にあります。1957年に西ドイツで発売されたサリドマイドは、副作用が少ない睡眠薬・鎮痛剤として世界各国で使われていましたが、1961年に妊婦が服用すると胎児に先天異常が生じることが判明(いわゆる「レンツ警告」)。日本でも被害者は推定およそ1,000人(うち公式認定者は309人)とされています。

この薬害を契機として、米国では1962年の法改正(キーフォーバー・ハリス改正)によりFDA(食品医薬品局)にGMPを定める権限が与えられ、これに基づき1963年に医薬品の製造規範に関する基準が公布されました。その後WHO(世界保健機関)が同基準をベースにWHO-GMPをまとめ、1969年に加盟国への実施勧告を行いました。この勧告を受け、日本では1976年から行政指導が始まり、1980年にGMP省令が施行されました。

こうした歴史を経て確立されたのが、「品質は後から検査するのではなく、製造工程の中で作り込む」というGMPの根本的な考え方です。この医薬品分野で培われた「絶対に深刻な健康被害を出さない」ための厳格な仕組みと思想が、現代の健康食品や化粧品における品質管理基準のベースにもなっています。

 

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GMPでよくある疑問


ここからは、GMPに関するよくある疑問にお答えします。

 

Q:GMP認証を取得している工場と、取得していない工場の具体的な違いはなんですか?


A:最大の違いは「誰が作っても、いつでも、同じ品質の製品を安定して作れる仕組みがあるかどうか」です。

GMP認証を取得している認定工場では、製造手順の文書化・設備のバリデーション・原材料および製品の試験記録・従業員の教育訓練記録が体系的に整備されており、第三者による審査でその実効性が確認されています。未認定の工場では品質管理の水準が施設ごとに異なり、作業者の経験や判断に依存した製造が行われているケースもあります。

例えば、異物混入や表示ミスなどのトラブルが発生した場合、GMP認定工場では製造記録や作業記録をもとに原因を追跡し、再発防止策を講じる仕組みが整っています。一方で、記録管理が十分でない場合は原因究明に時間がかかり、対応が長期化するリスクがあります。

また、企業によっては委託先の選定条件としてGMP認証の取得を求めるケースもあります。特に健康食品や化粧品市場では品質保証体制が重視されるため、GMP認証の有無が商談や採用判断に影響することも少なくありません。

富士宮通運では日健栄協GMPおよび国際規格ISO 22716(化粧品GMP)の認証を取得しており、これらの管理体制が整った製造後工程の委託先として評価をいただいています。

 

 

Q:GMP認定工場でのOEM(受託製造)は費用が高くなりますか?


A:非認定工場と比較すると、製造コストは10〜20%程度高くなる傾向があります。

これはGMP基準の維持に必要な設備投資・検査費用・文書管理コストが製造単価に反映されるためです。ただし、品質トラブルが発生した際の製品回収・ブランドダメージ・消費者対応にかかるコストと比較すれば、長期的な費用対効果は十分に見合います。こうしたリスクを未然に防ぐための品質管理コストと考えると、GMP認定工場への委託は非常に有効です。

富士宮通運では、製造加工と物流を一体で手配できるため、製造委託先と物流業者を別々に契約する場合と比べてトータルコストを抑えられる場合があります。

 

 

Q:GMPの基準を満たす製造体制を、自社工場でも構築することは可能ですか?


A:論理的には可能ですが、現実的なハードルは非常に高いのが実情です。

GMP基準を自社で満たすためには、製造ライン・空調・検査設備などへの数千万円~数億円規模の投資に加え、各工程の標準作業手順書(SOP)の整備、品質管理部門の設置・人材育成、設備のバリデーション実施など、構築に膨大な時間と費用がかかります。

さらに、認証取得後も設備の維持管理、教育訓練、文書改訂、内部監査、是正措置の運用などを継続的に実施する必要があります。作業者の異動や退職があった場合でも同じ品質レベルを維持できるよう、組織全体で管理体制を維持し続けなければなりません。

 

 

Q:医薬品やサプリのOEM(受託製造)で、GMPマークを表示するための条件はなんですか?


A:GMP認定工場での製造に加え、各業界団体の申請手続きと審査をクリアする必要があります。

健康食品の場合、例えば日健栄協のGMPマーク表示には同協会による工場審査・認定と、製品ごとの申請・承認が必要です。マーク維持には継続的な審査費用も発生します。

 

 

Q:GMPの知識がなくても委託できますか?


A:はい。GMPに関する専門知識やノウハウがなくても、OEM(受託製造)の委託は可能です。

GMP認定工場では、品質管理・製造管理に関する専門的な運用はすべて製造業者側が担います。発注者(ブランドオーナー)に求められるのは、製品の仕様・成分・ロット数・希望納期などの情報提供です。

富士宮通運では、初めてOEM(受託製造)を利用されるお客様でもご不安のないよう、分かりやすく丁寧にサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。

 

 

Q:委託先として検討している工場がGMPをきちんと実践しているかはどうすれば確認できますか?


A:主な確認方法として、GMPチェックシート(アンケート)の送付・回収による書面評価、工場への現地監査、GMP認定証などの書類確認が挙げられます。これらを組み合わせることが確実です。

富士宮通運ではお客様のご希望に合わせ、GMPの実践状況を開示しています。認定を取得して終わりではなく、品質向上のための取り組みを定期的に行っていますので、気になることがあればお気軽にお問い合わせください。

 

 

Q:海外へ輸出する製品を作りたいのですが、日本のGMP基準を満たしていれば大丈夫ですか?


A:いいえ。原則として、輸出先の国・地域が定めるGMP基準への適合が必要です。

日本のGMP基準(J-GMP)は国内向けに設計されており、例えば米国向けに製品を作る場合はFDAのGMP基準への適合が求められます。

富士宮通運では化粧品の国際規格ISO 22716の認証を取得しており、海外展開を含む取引にも対応の基盤が整っています。また、健康食品については、米国向け輸出の前提となる米国FDAの食品施設登録(米国に食品等を輸出する施設に求められる届出制度)も行っており、取引先のお客様が海外であるケースや、将来的な輸出を見据えたご依頼にも対応してまいります。

 

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まとめ


GMPとは製造工程の標準化と記録管理を通じて、製品の品質管理体制を「仕組み」として整備するための基準です。誰が作っても一定の品質を保てる体制の構築がその本質であり、健康食品・化粧品・医薬品など消費者が直接使う製品の製造においては、品質管理の根幹をなす考え方として広く浸透しています。

富士宮通運では、日健栄協のGMPガイドラインおよびISO 22716を遵守した品質管理体制のもと、充填・包装・表示・保管・出荷に対応しています。認定取得後もより高い品質水準を目指すべく、GMPの対応状況の定期的な見直しやマニュアルの改訂、作業者ごとの力量評価や実技教育などを実施しています。

また、化粧品では義務化されていないCSV(コンピュータ化システムバリデーション)対応の電子システムを自主的に導入するなど、より高い基準に対応した取り組みを続けています。

ぜひお気軽にご相談ください。

 

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